
| 「こんにちは」Oさんの元気な声が私の耳に飛び込んできた。8年ぶりの来院で、私は「お久しぶりです。お元気ですかね?」Oさんは「あれから近くの歯医者さんでも診てもらっていたのですが、2〜3ヶ月ぐらいで、つめものがよく取れるんです。どうしてでしょう? 今はそこがチョコレートでしみるようになったので診て下さい。」とのこと。 カルテを見ると、初診は16年前に4回、14年前に1回、13年前に1回、8年前に1回で、それが最後となっている。 治療の内容は、最初の4回が治療に入る前の準備や説明およびブラッシング指導で、後はそれぞれ緊急処置や相談である(本治療に入る前に中断となっている)。 今回の相談は、もともと歯並びが悪いので、以前先生に教えてもらったようにブラッシングをやり、さらにフロスもしている。 |
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2008年10月8日 来院のときのお口の写真 |
そうやって手入れしているにもかかわらず歯肉が下がり、歯の根が出て、悪いことにそこが虫歯になって、そのために削って詰めてもらった。
しかし、そのつめものがよく取れる。なんで?とその歯医者さんに聞くと、歯とつめものの強度が違うからということだ。
そこで16年前となる1992年1月24日に採取した歯型を出してきて、現在の自分の歯の状況と比較し見ていただきました。
「これが16年前のあなたの歯をそっくり記録した立体模型です。それと比べると現在では、特に下の歯の歯肉が下がってきていますね。
下の左右の臼歯の外側にも歯肉退縮があり、歯根面が露出しています。
下の左右の犬歯はとりわけ顕著で、見た目でも歯がかなり長くなって見えます。しかも付け根の部分には汚れも虫歯(デンタルカリエス)もあります。
先ず、私がOさんのお口の中をブラッシングしてみますので、自分でやるのとどこがどう違うのか比べて下さい」と話し、さっそく実験。
以前に指導したはずの方法のどこができていて、どこが不十分かは、これで大体わかります。
その結果、ハブラシの充てる位置や動かし方が微妙に違っていたことが判明。特に付け根はやっているつもりがやれていいなかったこともわかりました。
磨き落としがある場所は不潔度が進み、問題が起きやすくなります。
なぜ、もともと同じようない地であったのに犬歯の歯肉だけが特に下がったかについては、噛み合わせの影響が大いに考えられます。
つまり、奥歯の噛み合わせの変化により、噛み合わせのカギになっている犬歯の負担がさらに強くなり、その結果として、歯肉の低下がはげしく起きたと考えることもできます。
このOさんの噛み合わせは、小さいときからのアゴの発育不全もあり、乳歯時代のアゴの小ささを未だに残していて、そのしわ寄せもあり前歯の歯列不全にもなっていますが、臼歯部の歯の縦軸をみると、内側に倒れた状態で固まったような噛み合わせにできてしまっています。
これは、臼歯がまっすぐ立てるための成長発育のきっかけがつかめなかったことが類推され、噛み合わせの高さは本来できたであろう高さまで達せず、口の中は低く狭い状況をしいられた結果、舌を入れておくための容積は広くとることもできなかった。
このような状態でできる噛み合わせは、通常非常に緊張度の高いものとなることが多い。噛み合わせはきつく遊びがない。
また傾いた歯に噛みこむ噛み合わせは前歯の歯列不正をさらに不正にする悪循環を引き出しやすい。
また、このような噛み合わせは、噛み合わせのずれより、噛み合わせのロックによる影響や身体症状をつくりやすいのです。
つめたものが取れやすいのは、噛み合わせの緊密さとも関係があり、噛む時に下の歯にかかる力の位置が噛めば噛むほど。下の歯を内側に倒そうという力に転換されることと関係があり、言い方を変えれば噛むたびに歯の外側を引き延ばす力になるからです。したがって、歯の外側につめたものは、つめたものと歯との接合部からひきはなされて、できた隙間が拡大していけばあるときはずれることになります。
これは何回やり直しつめ直しても同じ結果をもたらす。
噛み合わせをコントロールすることで、はじめて問題を小さくできます。
口全体の噛み合わせを理解した上で、それぞれ1本1本の葉の噛み合わせを見ていく必要があります。
いずれにしても、つめたものは取れることもあって、取れればまたつめればいいですが、2〜3ヶ月で取れるか、2〜3年で取れるかは、つめ方や仕上げがきちんとされているかの基本的な、あるいは初歩的なミスもかなり多いと思います。
材料は良くなっても結局のところ治療は人の手でやることに変わりはないので、その手が荒れていてはいけないのは当然のことです。
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| 1992年1月27日のときの歯の模型 | 2008年10月8日のときの歯の模型 | |
| 歯はこんなに変わりました。歯肉が下がって歯が長くなってしまいました。 | ||